日本全土で人気沸騰中のクラフトビール。もちろん、長野県もそのトレンドからは外れていません。ここには、数々の魅力的なブルワリー(醸造所)が点在しているんですよ。クラフトビール愛好者が増える中、今回の注目は北アルプスエリア。なぜなら、この地域の豊富な良質な天然水が、特別なビールを生み出す秘訣となっているからです。各醸造所ごとに独自の風味や特色があり、その幅広さに驚くことでしょう。自分好みの味や香りのクラフトビールを、きっと見つけることができると思います。これからの暑い季節に向けて、今回ご案内するビールは筆者も早速試してみたい!と心から思います。全部は紹介しきれないけれど、気に入ったものがあったら、ぜひ手にとってみてくださいね。
北アルプスブルワリー
全国でも希少な「湧水の湧き出る場所」として、長野県大町市は特別な存在感を放っています。たとえば、この地で「蛇口から湧水が流れる」という話は、地元の人にとっては日常の風景。その高品質な水は、多くの賞を手にしており、世界でも一目置かれる存在となっているんです。飲み水としての利用はもちろん、品質を極めるコンタクトレンズの大手メーカーやオーガニック化粧品ブランドがこの地を選ぶ理由となっています。また、その水で栽培される米やそば、果物、そして醸造されるワインや日本酒、淹れられるコーヒー。これらの”食”は、まさに北アルプスの贈り物といえるでしょう。そんな水の恩恵を受ける大町市に拠点を構える『北アルプスブルワリー』の中から、特におすすめするビールをピックアップしました。
氷河ラガー
『ジャパン・グレートビア・アワーズ2020』で堂々と銀賞を手中にした、この「ピルスナー」タイプのクラフトビールは、味わう者の心を魅了します。世界中で飲まれるビールの中心に君臨するピルスナー。このビールは、なんと全体の約7割を占めるほどの人気を誇ります。チェコの美しい街、ピルゼンで生まれたこの黄金の液体は、サッパリとしたボディとドライな口当たりが特徴。まさに、北アルプスの清らかな湧水とのマッチングが、最高のシナジーを生む組み合わせ。私たち日本人も昔から親しんできたビールスタイルといえるでしょう。ちなみに、アルコール度数は4.5%、IBU値は10と、バランスがよく取れています。
氷河ペールエール
ペールエールという名の麗しいクラフトビール。このビールの魅力は、ホップとモルトの調和が生み出す香り豊かな風味にあります。ペールエールという名前を耳にしたことがある方も多いのでは? それもそのはず、このビールはクラフトビール界でのスタンダードともいえるほど、国内外で圧倒的な人気を誇っているんです。アルコール度数5.5%、IBUは40と、どちらも絶妙なバランス。あまりに冷やすと、その豊かな香りが逃げてしまうので、ちょうどよい温度で楽しむのがベスト。さらに、料理との相性も抜群。様々な料理との組み合わせを試して、あなたのお気に入りのペアリングを見つけてみてください。
穂高ビール
長野県といえば、寒暖差の大きい気候が魅力の土地。この特徴を持つ地域は、ドイツ種のホップ栽培にとって理想的な場所となっていました。実は、日本のホップ生産の主力地帯だったのがこの長野県。だが、時代の流れとともに、農産物の輸入自由化の影響で、一時期その生産は終息してしまったのです。しかし、クラフトビールの風が再び吹き始める中、長野のホップは再び光を浴びるように。地元生産へのシフトや、農家との独自のパートナーシップを結ぶ企業が増えてきました。その中で注目されるのが『穂高ビール』。地元長野のホップをふんだんに使用しており、特に日本の伝統的な料理との相性が抜群。日本が誇るホップの風味とともに、真のペアリングの楽しみを体験してみてはいかがでしょうか。
アルト
長野の地ビール界での星として輝くのが、『ジャパン・アジア・ビアカップ2011・2012』での金賞受賞が証明する、ドイツ・デュッセルドルフ風のビール。この伝統的なビールは、食事の味わいを引き立てるパートナーとして知られているのです。特にソーセージや豚肉料理の仲間との相性は絶妙。さらに、安曇野のホップが織り成す苦味が、独自の魅力を放っています。
そして、驚くべきは、海外の観光客からの反響も素晴らしいこと。その泡から溢れる美味しさに、「本当に美味しい!」という声が多数寄せられているのだとか。
しかし、その極上の味わいは食事だけにとどまらない。思わず目を疑うようなペアリングが、『地ビール穂高ブルワリー・ツインオークス内』のレストラン『L’ATELIER DES SENS(ラトリエ・デ・サンス)』で提案されている。足立史樹シェフのイチオシは、このビールとナッツのタルトやみたらし団子との組み合わせ。スイーツ愛好者として、私もこの組み合わせには興味津々です。ちなみに、このビールのアルコール度数は5%、IBUは23。
ヴァイツェン
軽快な飲み口と繊細な苦味が心地よい〈ヴァイツェン〉。このビールは、ドイツで生まれた小麦を主役にしたビールなのだ。特に、小麦麦芽を50%以上も贅沢に使い、さらには安曇野の恵み、地元産のホップも配合しています。
一口飲めば、酵母由来のバナナやスパイスを思わせる風味が広がり、その後には爽快で華やかな香りが鼻をくすぐる。このヴァイツェンは、和食を始め、フルーツや魚介を使ったカルパッチョ、トマトのサラダやフレッシュチーズなどの食材とも絶妙にマッチするのです。
飲み心地のさわやかさを求める人には、このビールが最高の選択。アルコール度数は5%で、IBUは19。食事と共に、あるいは一杯だけでも、このビールの虜になること間違いなし。
ペールエール
このペールエールは、日本の土と気候の恩恵、安曇野産のホップをほんの少し取り入れ、それにイギリスの伝統を感じるエールモルトとマリスオッターの絶妙なブレンドで醸造されている。ドライホッピングの技法を採用することで、その香りと風味は更に豊かに。
このビールを手に取ったら、まずは香りを楽しんでみてください。そして、食事と一緒にどうぞ。特に、ジューシーなステーキや、香ばしいピザ、焼きたての焼肉との組み合わせは最高です。アルコール度数は5%で、IBUは34。飲む度に、その味わいの深さと複雑さを発見できる一杯を、あなたに。
ケルシュ
『ジャパン・アジア・ビアカップ2011』で銀の称号を手に入れたこの〈ケルシュ〉は、ドイツで深く愛される歴史あるビール。本場では食前の楽しみとして多くの人々に選ばれてきたんだ。日本の土から受ける恩恵、安曇野産のホップを少し取り入れ、それが絶妙に香る気品ある甘さとスムーズなのど越しを生み出している。
ビールをそこまで好まない方でも、その優しい苦味と軽いボティはきっと気に入るはず。シンプルながらも味わい深い料理、例えば濃厚なチーズやサクサクのクラッカー、そして日本の伝統、野沢菜と一緒に味わうと、新しい発見があるかもしれない。アルコール度数は5%、そしてIBUは16。ビールの新しい楽しみ方、一緒に見つけよう。
まとめ
北アルプスエリアのクラフトビールは、まさに日本の自然と技術の結晶と言えるでしょう。地の恩恵と伝統的な製法、さらには最新の技術との融合が、これらの逸品を生み出しています。各ビールが持つ独特の魅力は、その土地の歴史や風土を感じることができる貴重な体験となります。次回、長野県を訪れる際は、是非ともこれらのブルワリーを訪ね、その味わいを楽しんでみてください。最後に、美味しいビールは飲む人の心を豊かにするもの。それを共有する仲間や家族との時間を、北アルプスのクラフトビールと共に、より特別なものにしてみてはいかがでしょうか。日常の中で、少しの贅沢を感じる瞬間を、これらのビールと共に過ごしてください。